司法書士の一人言
Soliloquy
» 不動産登記とは
公開日:2016.10.7不動産登記は、土地及び建物(不動産)の現況部分と当該不動産の権利関係を公示するため作成された登記情報に登記することにより、不動産取引の安全に寄与するものである。
簡単に言ってしまうと、不動産の登記簿を書き換えることによって、誰が所有者かを公示するものです。
では、登記簿とはどのような作りになっているのでしょうか
登記簿は表題部と権利部とに分かれています。
表題部とは
では、まず表題部とはなにが登記されているのでしょうか?
不動産の登記簿は現況部分と権利関係を公示しています。その現況部分を示すのが表題部となります。表題部には具体的に現況部分が登記されているので、所在、地番(不動産の所在場所)や地積、床面積(広さ)、などが登記されています。
こちらの登記に関しては、司法書士ではなく土地家屋調査士が代理をして登記申請していきます。
権利部とは
では、司法書士は何を登記するのでしょうか?
今、ご説明しました表題部ができた後に不動産の権利関係を公示するための登記手続きについて代理して登記申請します。
例えば、一例ですが「売買により所有者が変わった」とか、「相続により所有者が変わった」とか、「財産分与により所有者が変わった」などです。
こちらの権利関係を公示する部分を権利部といいます。また、権利部は甲区と乙区に分かれます。
甲区に登記されるのは「所有権に関する事項」が登記されます。
乙区に登記されるのは「所有権以外の権利に関する登記」が登記されます。
言い回しがよく分からないですよね(笑)
簡単にいってしまうと、甲区は所有者が登記され、乙区には抵当権などの担保権等が登記されることになります。
じゃ、何で登記をするの?となってしまいそうですが、登記することによって、自分の権利を主張でき自分の権利を守ることができるからです。
事例
例えば、AさんとBさんが不動産の売買契約をしてお金まで支払ったとします。ですが登記をする前にAさんがCさんに同じ不動産を売ってCさんが登記を備えたとします。二重売買の例ですが、その場合にはBさんはCさんより先に買ったのにこの不動産が自分のものだと言えなくなってしまうんです...
このようにBさんはCさんみたいな人に自分の不動産だと主張できるように登記を備えておかなければならないのです。
根拠は民法177条です。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
この条文は、ものすごい深く、論点がいっぱいある条文です。司法書士試験でも必ず問われる論点です。大事な条文とだけ覚えておいて下さい。
具体例
最後に実際の具体例を紹介して終わりにしたいと思います。
Bさんが銀行でローンを組んでAさんから中古の土地建物を購入したとします。現況部分である登記簿を起こす作業はAさんが既に行っているため、特段の事情がないかぎり表題部を今回は登記をする必要はありません。AさんからBさんが不動産を購入したとのことでしたので、所有者をAさんからBさんに変更する登記(所有権移転登記)をします。これにより甲区の所有者の欄がAさんからBさんへ変更します。また、Bさんは銀行とローンを組んでいるので、銀行のBさんに対する担保権を設定する登記(抵当権設定登記)をします。これにより、乙区に担保権者として銀行が登記されます。
以上の流れを当事者ら委任を受けて、司法書士が代理して登記申請を行います。
登記の重要性や実際に登記をする場面を少しはご理解頂けましたでしょうか?
今回の一人言が何かのお力になれば幸いです。