司法書士の一人言
Soliloquy
» 遺言⑥
公開日:2017.10.2今回は自筆証書遺言を自分で書く際に注意しなければならない点を中心に書いていきたいと思います。
自筆証書遺言の要件
(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
絶対に守らなければならないルールは次の4つです。
①全文の自書
②日付
③氏名
④押印
この①~④について細かいところですが注意点を書いていきます。
①全文の自書
全文の自書と規定されていますので、パソコンやワープロなどではこの要件をみたさないことになります。もちろん、代筆で書いたとしてもこの要件をみたさないので注意です。
次に、何を書いていくかです。
「誰に、何を、どれだけ、あげるのか」これを分けて書いていきます。
・誰に
例えば、妻A子にあげるなら、「妻A子(昭和●●年●●月●●日生)」と書いて特定します。長男にあげるなら「長男B郎(昭和●●年●●月●●日生)」のように人を特定します。
親族でない第三者にあげる場合には、住所、生年月日又は職業、氏名などを記載して特定するとよいでしょう。
・何を
あげる財産を書きます。不動産をあげるのか、株式をあげるのか、預貯金をあげるのかを書きます。遺言を書く前に自分の財産を特定できるように洗い出すのがよいでしょう。
財産の特定の仕方がそれぞれ異なりますので参考までに
不動産の場合・・・「家を...」ではダメです。不動産を特定するためには、登記簿のとおりに記載しなければなりません。
土地であれば「所在・地番・地目・地積」を登記簿のとおりに記載します。また、建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を登記簿のとおりに記載します。
預貯金の場合・・・「○○銀行 ××支店 普通預金 口座番号1234567」
「ゆうちょ銀行 通常貯金 記号 ○○○○番号○○○○」
のように特定します。
有価証券の場合・・・「○○商事株式会社の株式 全部」
「○○工業株式会社の株式 1000株」
のように記載します。また取引していた証券会社、支店も記載するとよいでしょう。
投資信託の場合・・・「投資信託 ○○・ファンド 全部」
「投資信託 ○○・ファンド 1万口」
のように特定します。
自動車の場合・・・メーカー名、車種、ナンバー、車体番号で特定していきます。
債権の場合・・・「◯年◯月◯日に甲野太郎に貸した貸付金 金100万円」
「◯年◯月◯日の××商事に対する売掛金」
貸付金、売掛金は、発生日付や対象商品、相手方の氏名や名称などで特定します
動産の場合・・・「動産全部」
「自宅内に家財道具一式」
動産の置いてある場所や物を特定します。
・どれだけ
全部をあげるのか、それとも一部をあげるのか、一部なら割合であげるか...
そのあたりを決めていきます。
・あげるのか
例えば、全て財産を妻A子にあげる場合
「全ての財産は、妻A子にあげる」
これではダメなのです。使用してはいけない言葉としてNGワードをあげておきます。
「あげる、与える、託する、頼む、譲る、任せる」
これらは全部使用してはいけません。
正しい文章は「全ての財産は、妻A子に相続させる」となります。
相続人へあげる場合には「相続させる」という言葉を使います。また、相続人以外の人にあげる場合には「遺贈する」という言葉を使って下さい。ちなみに、動物にはあげられませんので注意して下さい。
今回はここまでです。
全文の自書の中身で1回終わってしまいました。
次回からは絶対に守らなければならないルールの②日付から書きます。