司法書士の一人言
Soliloquy
» 遺言⑤
公開日:2017.9.4今回は、遺言③で紹介した自筆証書遺言と公正証書遺言を比較してみたいと思います。
自筆証書遺言
メリット
・自分で書くので費用がかからない
目の前にある広告の裏紙でも、ルールを守っていれば遺言として認められます。
・思った時に気軽に書ける
ルールが守られていれば、いつでもどこでも書くことができます。
・証人は必要ないし、内容を秘密にできる
遺言を書く際に証人は不要ですので、誰に見られることもなく、誰に聞かれることもなく、内容を秘密にすることができます。
デメリット
・遺言者が死亡した後、家庭裁判所にて検認手続きが必要となります。
・ルールを守らないことにより形式・内容の不備があれば無効になる可能性もあります。
・保管形態により偽造や破棄される恐れもあります。
検認とは
(遺言書の検認)
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)
第1005条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。(裁判所ホームページより)
また、遺言を発見した者が家庭裁判所外で遺言を開封すると過料に処せられます。
公正証書遺言
メリット
・公証人の関与があるので検認の手続きが不要
遺言の種類で紹介した中で唯一検認の手続きがないのが公正証書遺言です。
・公証人が作成するので内容に不備があり無効となる恐れがない
内容については公証人が関与するため法的に問題となることが少ないです。
・公証役場に保管されるので、偽造や破棄の恐れがない
原本は必ず公証役場に保管されるので紛失等の心配もいりません。
デメリット
・証人が2人必要となります。証人になることができない人が規定されています。
(証人及び立会人の欠格事由)
第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
具体的には遺言者の親族や遺言により利益を受ける人の親族があたります。
・公証人に対する費用がかかります。
以下、日本公証人連合会HPを引用します。
遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。数人に対する贈与契約が1通の公正証書に記載された場合と同じ扱いです。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。 例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、3①の方式により、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円です。 遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。
http://www.koshonin.gr.jp/business/b10
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較しました。
次回は、自筆証書遺言を書く際のルールの細かい点を紹介します。