司法書士の一人言
Soliloquy
» 遺言②
公開日:2017.6.5前回は遺言の趣旨等、入口の部分を掲載しました。
今回からは具体的なことを書いていきます。
遺言の必要性
遺言を書いておいた方がいいという場合はどのような場合かを具体例と理由を記載して説明していきます。
①遺言者の配偶者との間に子どもがいない場合
この事例の相続人は直系尊属(親)となるか、直系尊属が既に亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人となります。
しかし、兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者に全て相続させるという遺言を書いておけば遺言とおりの内容が実現できることになります。
遺留分とは、相続人のために留保されなければならない遺産の一定割合のことです。例えば、相続人が妻及び子2人という場合には、「全ての財産を妻に相続させる」という遺言の内容だと、子2人の遺留分を侵害することになるので、遺言者が死亡した後、遺留分減殺請求権を行使される可能性があります。
②遺言者が先妻と離婚し、その後再婚をし、先妻との間に子がいる場合
この事例の相続人は先妻との間の子と後妻になります。
先妻との間の子が後妻と養子縁組をしていない限りは、ほぼ関わりがないので遺産分割がまとまりにくいということが多いです。
この場合にも、遺言を書いておくことが有効的な手段となります。
③ 遺言者を献身的に世話してくれた長男の嫁に財産を分けてあげたいとき
長男の嫁は、遺言者の相続人ではありません。このような気持ちがある場合には遺言を書いておかないと遺言者の財産を長男の嫁に分けてあげることはできません。
④ 内縁の夫・妻がいる場合
内縁とは、婚姻の意思をもって共同生活をし、世間的には夫婦と認められているにも関わらず、法律で定められている婚姻届を提出していないため法律的には夫婦として認められていない関係のことをであり、内縁の夫・妻は相続人ではないです。この場合には、遺言がない場合には、夫・妻の法定相続人が相続することになります。
⑤ 相続人ごとに承継させたい財産を指定したいとき
例えば、不動産は長男、預貯金は妻、株式は次男に相続させたい場合などです。この場合、遺言がなかったとした場合、不動産、預貯金及び株式はそれぞれの財産ごとに法定相続分にて共有することになります。もちろん、その後に遺産分割協議にて分ければいいですが、遺産分割協議には遺言者の意思はないので遺言者が事例のように指定したい場合には遺言を書く必要があるでしょう。
⑥ 相続人が全くいない場合
相続人がいない場合には、一定の手続きを経て国に帰属することになります。推定相続人がいない場合、遺言がないと財産は一定の手続きを経て、特別縁故者と認定される人がいなければ国のものになってしまいます。推定相続人がいない方は遺言を書いて財産を承継してもらう人を指定することができます。慈善団体に寄付するなどはよくある話です。
以上の事例のような場合には遺言を書いておいた方がいいでしょう。あくまでも一例なので、遺言を書いた方がいいかお悩みの方は一度専門家に相談してみたらいかがでしょうか?
今回も遺言の必要性を書いて終わってしまいました。
次回は、遺言の種類から書いていきたいと思います。