司法書士の一人言
Soliloquy
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公開日:2017.5.2相続のお話を3回に渡り掲載しましたが、それに関連して今回は遺言をテーマに記事を書きたいと思います。こちらも前回までの相続と同様に「相続・遺言セミナー」と題したセミナーが数多く開催されていると思います。
1つのセミナーを相続、遺言の2部構成で行う形態が多いかなと思っていますが、相続と遺言とは別物ですよね。
場合分けとしては、相続は人が亡くなった後の話であり、遺言は人が亡くなる前の話です。
相続対策の中で最もポピュラーなものとして遺言が挙げられます。
最近、遺言作成のお手伝いをさせて頂いたのもありまして、今回は遺言について、記事にしていきます。
読み方は?
まず、「遺言」の読み方ですよね。一般的に「ゆいごん」と言われていますが、法律上の読み方としては「いごん」と読みます。
遺言とは
遺言制度の趣旨としては、遺言者の最終意思の尊重として、遺言者の死後の法律関係が遺言で定められたとおりに実現することを法的に保証するものです。もちろん他の規定等に抵触しない範囲でのことは言うまでもありません。
では、遺言は民法にどう記載されているのでしょうか?
(遺言の方式)
第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
民法に定める方式に従って書かなければならないと規定さているが、厳格な要式行為であります。要式行為とは法律上定められた一定の方式や方法に従って行わなければならないという意味です。これは遺言の効力発生時には遺言者の死亡しており、その真意が確認することができないからです。
(遺言能力)
第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。
遺言の趣旨は人の最終意思の尊重であるため、通常の取引行為とは異なるので遺言の能力は20歳ではなく15歳と引き下げられています。
(成年被後見人の遺言)
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
成年後見制度を利用している人でも遺言はすることができますが、遺言を書くことも法律行為ではあるため意思能力は必要です。また、成年被後見人が遺言を書く時は、一時的な意識の回復及び医師の立会いが必要とされています。
第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
これは遺言を書く時に15歳以上でなければなりませんと注意的に規定した条文です。効力発生時(遺言者の死亡の時)ではなく、遺言を書く時に15歳以上という意味です。
遺言について書き始めましたが、条文の解説で1回目が終わってしまいました。
次回は遺言の必要性から書きたいと思います。