司法書士の一人言
Soliloquy
» 公正証書遺言の検索
公開日:2017.1.10公正証書により作成された遺言はどのように保管されているのでしょうか?
遺言を書く際に多く利用されている公正証書遺言ですが、公正証書遺言は検索することができます。
公正証書遺言の保管
(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
民法第969条に基づいて作成された公正証書遺言は通常、原本、正本、謄本の合計3通が作成されますが、一般的に次のように分けて保管されます。
・原本・・・公証役場にて原則として20年間保管されます。
・正本・・・遺言執行者が遺言執行のために、保管します。
・謄本・・・遺言者が保管します。
※遺言執行者がいない場合は正本及び謄本を遺言者が保有することでしょう。
このような状態で保管されていても何らかの事情にて正本や謄本が発見されない場合や、紛失等により見当たらない場合には公証役場にて遺言検索の依頼をして探してもらいます。
遺言検索システム
日本公証人連合会では、平成元年以降(昭和64年1月1日以降)全国の公証役場にて作成された公正証書遺言を「遺言検索システム」としてデータにより、遺言者の情報を管理しています。なお、東京公証人会所属の公証人が作成した遺言については、昭和56年1月1日以降に作成された遺言も検索できる様になっております。
遺言の検索については、生前については遺言者のみが検索可能ですが、遺言者の死亡後には相続人や受遺者、これらの者から委任を受けた者は、どこの公証役場でも調査を依頼できる様なシステムになっています。
費用は無料です。
必要書類
①遺言者が死亡をしたことを証する書面として除籍の記載のある戸籍謄本等
②相続人の戸籍謄本
③相続人の身分証明書
なお、司法書士にお願いすることもできます。通常は、遺産承継業務の一環として司法書士が検索します。
全ての書類が原本還付(公証役場にてコピーをとって原本は返却してくれる)可能です。
相続人であれば公証役場にて検索することが可能です。
遺言検索の結果
上記必要書類を提出し、しばらくすると公証人が「遺言検索システム照会結果通知書」として次のような事項を記載したし書類を渡してくれます。
次の文例は検索しても公正証書遺言がなかった場合です。
「あなたから提供された資料に基づいて、日本公証人連合会で運営する遺言検索システムにより検索しましたが、○○○○様の公正証書遺言は見当たりませんでした。」
公証役場によって、形式や公証人の押印の有無等、多少の違いはありますが、内容は全く同じものが発行されます。
待ち時間は10分くらいで発行してくれます。予約しなくても対応はしてくれますが、一報してから公証役場に行った方がいいでしょう。
もし、被相続人が公正証書遺言を書いていたかもしれないと疑問に思った場合、遺言の有無により相続関係も変わってくるので、公正証書遺言の検索をしてみてはいかがでしょうか。