司法書士の一人言
Soliloquy
» 「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書
公開日:2016.12.5必要な戸籍とは
相続による所有権移転登記をする場合に必要な書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要となりますが、被相続人の戸籍を辿っていくと、廃棄処分により除籍謄本が交付されなかったり、戦争や震災等で除籍謄本が消失した場合なども交付されない場合があります。
このような場合には、必要書類されている被相続人の戸籍や除籍が集められません。市区町村長が発行した廃棄した証明書や焼失した証明書を役所は発行してくれますが、市区町村長が発行した廃棄した証明書や焼失した証明書で足りるのでしょうか?
除籍等の保存期間
とその前に、先ほどの廃棄処分についてですが、平成22年法務省令22号改正より、除籍等の保存期間が150年とされましたが、それ以前は保存期間が80年でした。これにより廃棄処分される戸籍がでてしまったのです。
「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)
では話を戻しましょう!
被相続人の出生から死亡までの戸籍がそろわない場合には、上記の市区町村長が発行した廃棄した証明書及び「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書に相続人全員の印鑑証明書を添付した書類が必要でした。この証明書の添付根拠は昭和44年3月3日付け民事甲第373号の先例ですが、この先例が出てから50年近くが経過したとのことで、この先例を変更するという通達が平成28年3月11日に出されました。
「除籍等が滅失等している場合の相続登記について(通達)」〔平成28年3月11日付法務省民二第219号法務省民事局長通達〕
「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書添付)の提供を要する取扱いとした昭和44年3月3日付け民事甲第373号民事局長回答が発出されてから50年近くが経過し,同証明書を提供することが困難な事案が増加していることに鑑み,平成28年3月11日以降は,戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え,除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば,相続登記をして差し支えない
要するに
要するに、『「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書に相続人全員の印鑑証明書を添付した書類』を添付しなくてもよくなりました。
被相続人の出生から死亡までの戸籍及び収集できない場合は、被相続人の出生から死亡までの集められる戸籍に市区町村長が発行した廃棄した証明書を併せて提出すればよいということになります。
当事務所では遺産分割協議書に「他に相続人はない」旨を記載して「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書を兼ねる方法をとっていましたが、その文言が不要になったという訳です。
これは司法書士業界では大きな衝撃でした(私だけかもしれませんが(笑))
この通達から少し時間が経ちましたが、この通達後に初めてこの状況を目の当たりにしたので今回の記事にしました。